文書作成日:2024/3/28
2024年10月に、従業員数(厚生年金保険の被保険者数)51人以上の企業で、週20時間以上働くパートタイマーやアルバイト等(以下、「パートタイマー」という)も社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入することになります。以下では、今回の社会保険の適用拡大について押さえるべき点についてとり上げます。
社会保険の適用拡大は、2020年に成立した年金制度改正法により、2022年10月に従業員数101人以上、2024年10月に従業員数51人以上の企業について、週の所定労働時間が20時間以上等の加入要件を満たしたパートタイマーが、新たに社会保険の被保険者になることが決定されました。
ここにおける従業員数とは、「厚生年金保険の被保険者数」であり、社会保険の適用事業所で厚生年金保険の被保険者の総数が過去12ヶ月のうち、6ヶ月以上50人を超えることが見込まれることを「常時 50人を超える」として、特定適用事業所として扱うことになっています。
そのため、2024年10月からの特定適用事業所は、2023年10月から2024年9月までに、厚生年金保険の被保険者数が6ヶ月以上50人を超えた適用事業所が該当することになります。2024年10月時点の厚生年金保険の被保険者数で確認するわけではありません。
なお、法人事業所の場合は、法人番号が同じ適用事業所の厚生年金保険の被保険者数で判断し、個人事業所の場合は、適用事業所ごとの厚生年金保険の被保険者の総数で判断することになっています。
社会保険の適用拡大に伴い、新たに被保険者となるパートタイマーとは、1週間の所定労働時間または1ヶ月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3未満である人のうち、以下の1〜3のすべてに該当する人について、短時間労働者として社会保険の加入対象となります。
1.週の所定労働時間が20時間以上であること
週の所定労働時間とは、就業規則、雇用契約書等により、そのパートタイマーが通常の週に勤務すべき時間のことです。必ずしも週単位で所定労働時間が決まっている場合ばかりではないため、例えば、1ヶ月単位で決められているときは、1ヶ月の所定労働時間を12分の52で除して算定するといった方法があります。
2.所定内賃金が月額88,000円以上であること
基本給や各諸手当等を含めた所定内賃金の額が、88,000円以上であることが賃金の基準になります。月給ではなく、時間給等で賃金が決まるときには、月額に換算して判断します。なお、以下の賃金は所定内賃金に含めないことになります。
- 結婚手当、賞与等の臨時に支払われる賃金および1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
- 時間外労働、休日労働および深夜労働に対して支払われる賃金
- 精皆勤手当、通勤手当、家族手当等の最低賃金に算入しない賃金
3.学生でないこと
大学、高等学校、専修学校、各種学校(修業年限が1年以上の課程に限る)等に在学する生徒または学生は加入の対象外です。ただし、以下の学生は加入の対象となります。
- 卒業見込証明書を有する方で、卒業前に就職し、卒業後も引き続き同じ事業所に勤務する予定の人
- 休学中の人
- 大学の夜間学部および高等学校の夜間等の定時制の課程の人等
新たに特定適用事業所に該当する可能性のある企業は、特定適用事業所になることで新たに社会保険に加入することとなるパートタイマーを確認しておくとよいでしょう。社会保険料の負担は少なくないため、社会保険の加入に前向きなパートタイマーばかりではなく、労働時間を減らすといった就業調整を行うことで、社会保険に加入しない労働条件に変更を希望するパートタイマーも発生することが予想されます。
また、社会保険に加入はするものの、新たに発生する社会保険料の負担を踏まえた上で、社会保険の加入前の手取り額となるように希望するパートタイマーもいます。
個々のパートタイマーにどこまで対応できるかは企業によって異なりますが、就業調整をすることで、人手不足となり業務に影響が出るようなことは避ける必要があります。
助成金を受給するためには、各種要件を満たす必要がある他、事前に「キャリアアップ計画書」を提出する必要があります。助成金の活用を考えるときには、より早めに計画をする必要があります。
厚生労働省は社会保険の適用拡大特設サイトを充実させており、企業や新たに社会保険に加入するパートタイマーが活用できるパンフレットや動画等を公開しています。参考リンクからアクセスして、活用をしたいものです。
■参考リンク
日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」
日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内」
厚生労働省「社会保険適用拡大 特設サイト」
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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